米大統領選討論会の主なポイント

討論会に臨んだトランプ氏(左)とバイデン氏/CNNより 権力
討論会に臨んだトランプ氏(左)とバイデン氏/CNNより

バイデン氏とトランプ氏が直接論戦 米大統領選討論会の主なポイント
2024.06.28 Fri posted at 19:19 JST
https://www.cnn.co.jp/usa/35220823.html 引用

概要

(CNN) 米国のバイデン大統領はトランプ前大統領より3年7カ月年長だ。しかし27日夜にCNNで放送された大統領選の討論会で、81歳の現職と78歳の挑戦者の年齢差は実際よりもずっと大きく感じられた。

バイデン氏の声はしわがれ、音域も狭い。トランプ氏との違いを明瞭に示すことができない場面がしばしば見受けられた。国境の安全対策に関する実績を擁護する際には次第に声が小さくなり、トランプ氏が「最後の方で何と言ったのかがよく分からない。言った本人も分かっていないと思う」と指摘する一幕もあった。

一方のトランプ氏は、前回2020年大統領選の結果を否定する言説を何度か繰り返した。24年大統領選の結果については選挙が「公正かつ合法」に行われれば受け入れるとしたが、前回選挙で不正があったとする虚偽の言説を改めて口にした。

これに対しバイデン氏は、負けたのに泣き言を言っていると、トランプ氏を批判した。

両者が直接討論するのは20年以来初めて。現職の大統領とその前任者が討論に臨むのは米国の歴史上初となる。両者は人工妊娠中絶、移民、外交政策、インフレなどの問題で激論を繰り広げた。

米ジョージア州アトランタで開催された討論会の主なポイントを以下にまとめる。

年齢の問題は一段と悪化

バイデン氏にとってこの夜の最も重要な仕事は自身の年齢に関する有権者の懸念を和らげることだったが、それは失敗に終わった。しわがれた声は時に聞き取れず、口ごもる場面も見られた。統計や法律を引用しようとする際には特にそうなった。声を張って論点を強調することもほとんどなく、20年大統領選の結果転覆を図ったとする件や人工妊娠中絶の問題でトランプ氏を攻撃する機会も逸した。

選挙陣営の情報筋2人によると、バイデン氏はこの数日で風邪をひいていたという。

民主党の予備選はとうに終わったが、討論会でのパフォーマンスを受けて党内での不安が高まるのは確実だ。名ばかりの候補者と競わせる形でバイデン氏に党からの指名を与えるのが果たして正しい措置だったのか、疑問を呈する向きも出てくるだろう。

バイデン氏に(いくらか)手心を加えたトランプ氏

対立候補としてバイデン氏の年齢をことあるごとに攻撃しているトランプ氏だが、討論会で何度も口ごもる相手に対しては抑制的な姿勢を示した。

討論開始から20分の時点で言葉が聞き取れなかったことを指摘した以外、トランプ氏が発話に苦慮するバイデン氏を揶揄(やゆ)するような場面はみられなかった。

4年前の最初の大統領選討論会では何かにつけてバイデン氏の発言を遮り、司会者に向かっても大声を発するなどしていたトランプ氏だったが、今回はパフォーマンスを修正し、自身の印象を傷つけないよう心掛けたとみられる。

バイデン氏によるワンフレーズ攻撃

討論会を通じ、バイデン氏の攻撃戦略は気の利いたワンフレーズを繰り返し浴びせてトランプ氏を否定することだった。

バイデン氏は「彼が話すことは一言一句うそだ」「こんなたわ言は人生で聞いたことがない」などの言葉でトランプ氏を攻撃した。

またトランプ氏が大統領在任中に退役軍人を「バカで負け犬」と呼んだかどうかについてのやりとりの中では、脳腫瘍(しゅよう)で死去した長男のボー・バイデン氏に言及した。ボー氏は亡くなる前のイラク従軍で毒ガスにさらされたと言われている。

バイデン氏は息子はバカではなく、トランプ氏こそがバカであり、負け犬だと明言した。
議事堂襲撃事件の取り上げ方に明確な違い

討論会全体を通じ、両候補者の違いが最も明確になったのは21年1月6日に発生した連邦議会議事堂襲撃事件だった。

議論が議事堂襲撃事件に向かうと、トランプ氏は話題を変えようと当時の米国の状況について説明。「偉大な国境を有し」、「エネルギーでの自立を果たし」、「税率と規制は過去最低の水準だった」との見解を示した。

トランプ氏が襲撃発生前に支持者に向けて行った自身の演説に触れることはなかった。演説の中で同氏は支持者に対し、議事堂で「強さを見せる」よう呼び掛けていた。

対照的にバイデン氏は、トランプ氏が「群衆に呼び掛けて議事堂へと向かわせた」と主張。議事堂が襲撃されている間、トランプ氏はスタッフから対応を求められていたにもかかわらず、「3時間そこに座って、状況を見ているだけだった」と批判した。

トランプ氏が中絶薬への立場を表明

経済やインフレ、移民、外交政策などが支配的なテーマとなった討論会にあって、人工妊娠中絶はバイデン氏が最も強みを発揮できる話題のはずだった。連邦最高裁は今月、中絶賛成派にとって有利な判断を2度にわたって下した。また民主党を支持する有権者の間では、中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」を最高裁が覆したことに対する怒りが今も消えていない。

ところが中絶に関する論戦は、今回の討論会における最悪の瞬間の一つとなった。バイデン氏は中絶を巡る民主党の立場を説明するのに苦慮。話にまとまりがなく、時折混乱しているようにも見えた。トランプ氏はこれに乗じ、米国民に対する移民の犯罪へと話題を転じた。

最高裁は今月、経口中絶薬の認可差し止めを認めない判断を下した。トランプ氏は討論会でこの判断を支持する考えを表明。大統領に当選した場合、中絶薬の入手を阻止しないと述べた。中絶の規制は州が決定すべきだという立場も繰り返し強調した。バイデン氏は中絶を州の裁量に委ねることに反対し、「ロー対ウェイド判決」 が下った当時は大多数の憲法学者がこれを支持していたと主張した。

強制送還の議論をかわす

移民の議論は今回の討論でバイデン氏の失敗を最も象徴する部分となったが、トランプ氏が自ら公約した移民取り締まりの厳格化に関する質問に直接答えることはなかった。厳格化が数十年米国に居住する人々や米国で仕事に就く人々、米国人の配偶者を持つ人々の強制送還に関連するものとなるのかどうかは明らかにされなかった。

その代わりにトランプ氏はバイデン氏を攻撃。大統領就任以降の不法移民による犯罪はバイデン氏に責任があると主張し、そうした犯罪で米国人が過去例を見ない水準で殺害されていると訴えた。

バイデン氏はトランプ氏が事実を語っていないと反論。違法な越境の事例は最近になって激減していることを強調しようと試みた。

今後の予定

バイデン氏とトランプ氏の2回目の討論会は9月10日、ABCの主催で実施予定。現時点ではこれが大統領選前の最後の討論会になるとみられている。