あるところに外国に憧れている子供がいました。
その子は「誰か話し相手になってください」と自分の気持ちを込めて、小さな紙に言葉と自分の連絡先を書きました。そして、手のひらにおさまるくらいの綺麗な半透明のボトルにその紙を入れました。その子は紙を入れたボトルをコルクで閉じ、そっと、海に投げました。ボトルは沖の方に流れていき、その子はボトルが見知らぬ地の誰かに届くのを願って浜辺を去りました。
一週間、1ヶ月間、半年と経つにつれ、その子の期待は薄らいでいきました。
ちょうど一年くらい経った頃、その子のもとに一通のエアメールが届きました。そこには「来月、君のところへ行きます」という返事がありました。
その子は自分の手紙が海外の人に届いたのが嬉しくて仕方がありませんでした。家族に話し、どうやって、その人をもてなすかを考えました。
約束の日、その子のところにその人はやってきました。その子の家族も総出で、感激し、できる限りのおもてなしをしたのです。
その人はおもてなしを受けて、感動しました。その子に、「今度、私のウチに来て欲しい」と言いました。
その子は「行きたいけれども、これ以上、家族に負担をかけるわけにはいかない」と断りました。
その人はその子が家族思いなのを察して、おもてなしを受けて、お礼を言って、帰りました。
その人は帰国してすぐに、その子に招待状を送りました。その人はその国では、大変偉い人だったのです。招待状には、その子がその国に行って帰ってくるためのチケットがすべて入っていました。
その子はその人がその国の偉い人だとは知らずに、その人に会いに行きました。
そこでその子は信じられないような歓迎を受けて、喜ぶと同時に、何故ここまで歓迎できるのか、不思議になりました。
「どうして、こんなに歓迎してくれるのですか?」と聞くと、その人は、「君は私のことを、できる限り歓迎してくれたでしょう?私もそうしただけです」と答えました。
その子は、それだけ、その人に負担をかけていると思い、早々に帰ることにしました。
その人は残念ではありましたが、その子の気持ちがわかったので、その子を見送ることにしました。
その子が帰る時に、その人はその子に言いました。「私は君のおもてなしに見合うだけのおもてなしをしていないと思っています。でも、君が遠慮深いのはわかります。だから引き留めません。ただ、これを受け取ってください」
その人はその子にひとつの箱を持たせました。「帰ったら開けてくださいね。来てくれてありがとう」
その子はありがたく箱をもらい、帰宅しました。箱を開けると、その人の、その子や家族に向けた感謝のメッセージと共に、紙や封筒やペンがたくさん入っていました。その人は「これでまた、私に連絡してください」と記していました。
その子はこの信じられない出会いに感謝し、ことあることに、その人に手紙を送ったそうです。
めでたし。めでたし。
この物語はフィクションです。