<ストーリー>
町を離れ荒れ地に向かう一人の少女。名前はソフィー年は18才。だが、その姿形はまるで90才の老婆だった。長女として亡き父の残した帽子屋を一人で切り盛りしてきたソフィー。だがそれは、決して彼女の望んだ生き方ではなかった。
ある日出征兵士でにぎわう町中でソフィーは兵隊にからまれる。その窮地に助けをさしのべたのは通りすがりの美青年。青年は不思議な力でそのまま空へと舞い上がり、ソフィーを束の間の空中散歩にいざなうのであった。夢のような出来事に心奪われるソフィー。しかしその夜、ソフィーは、店を訪れた荒地の魔女に呪いをかけられ、90才のおばあちゃんに姿を変えられてしまう。このままではいられない!意を決して荷物をまとめて荒れ地を目指すソフィー。夕暮れに迫る荒れ地を歩いていると、その向こうから、目の前に奇怪な形をした「ハウルの動く城」が姿を現したのであった……。
Amazonより
国内はもちろん海外でも高い評価を受けた『千と千尋の神隠し』から3年を経て、宮崎駿監督が発表した長編アニメーション(2004年公開)。魔女の呪いで90歳の老婆に変えられてしまった少女ソフィーと、人々に恐れられているが実は臆病者の美青年魔法使いハウルが、王国の争いに巻き込まれながら心を通わせていく。ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「魔法使いハウルと火の悪魔」を原作としたファンタジーだ。
ハウルの城がもやの中にその姿を現すファースト・シーンだけで観客を別世界に引き込む手腕からして、やはり圧倒的。エピソードの因果関係などが若干わかりにくいきらいはあるものの、晴れた日の海の輝き、静謐に佇む湖が与える安らぎ、日常の中に訪れる平和な時間といった、何気ない一瞬の素晴らしさに心を奪われずにおれない。「千と千尋〜」同様に、大筋と言うよりは細部にこそ味がある作品と言えそうだ。(安川正吾)
レビュー
「この世界をずっと見ていたいなあ」と思う――ストーリーの起承転結をどうこういうよりも、ただこの賑やかで小気味よい世界にしばらく住んで、まわりを眺めていたい。父の残した下町の帽子屋を切り盛りする18歳の少女、ソフィーは、ある日美しい青年と出会う。青年は何者かに追われている様子で、気がつけばソフィーは大空へ舞い上がり、一緒に空中を走っていた! が、これを妬んだ“荒地の魔女”が、ソフィーを90歳のお婆さんに変えてしまい――。“敵”と“味方”、“正義”と“悪”の対立がどんどん曖昧になっていくのがいい。ついでに“美”と“醜”、“若”と“老”の境目も崩されていく。いつも頼っていた価値観がどうでもいいことに思えた後、空から見る町並みのすばらしさや、悪魔や子どもらとの小賢しくて温かいやりとりが素直に胸にくる。全映像とリンクした特典の絵コンテも魅力的。この世界がいかに手塩にかけて作られたことか。 (吉田正太) — 2006年01月号 — 内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)
製作担当: 奥田誠治/福山亮一 英語版エグゼクティブプロデューサー: ジョン・ラセター プロデューサー: 鈴木敏夫 監督・脚本: 宮崎駿 英語版監督: ピート・ドクター/リック・デンプシー 原作: ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 作画監督: 山下明彦/稲村武志/高坂希太郎 美術監督: 武重洋二/吉田昇 音楽: 久石譲 声の出演: 倍賞千恵子/木村拓哉/美輪明宏/我修院達也/神木隆之介/大泉洋/原田大二郎/加藤治子/クリスチャン・ベール/ジーン・シモンズ/ローレン・バコール/ブライス・ダナー/エミリー・モーティマー/ビリー・クリスタル
— 内容(「CDジャーナル」データベースより)